行政書士・海事代理士の前田智也です。
当事務所においては、今月は、例月に比べて
事業年度終了届の提出が必要な事業者様の数が多い月です。
事業年度終了届とは、建設業許可を取得した事業者様に、
届出義務が課されており、年に1回(事業年度終了後4か月以内に)、
関係行政庁に提出する必要があります。
この届出の本丸ともいうべき存在が、「工事経歴書」です。
簡単に言えば、1年の工事実績を報告するリストのようなものです。
私たち行政書士は、クライアント様から、1年分の請求書を
全部お借りして、集計を行い、リストにまとめていきます。
工事経歴書は、以下のようにまとめます。
・許可を取得している業種ごとに作成
・許可を取得していない業種をまとめて「その他工事」として作成
例えば、建築一式、内装仕上、とび・土工の許可をお持ちの事業者様は、
建築一式で1つのリスト、内装仕上で1つのリスト、とび・土工で
1つのリスト、合計3つのリストを作成します。
そして、上記の3業種のいずれにも該当しないが、工事実績がある業種を、
「その他工事」として、リストを作成します。
許可を持っていないのに、実績があるの?と疑問に思うかもしれませんが、
建設業は、500万円未満の工事(建築一式は1500万円未満)は、許可なく、
請け負うことが可能であるため、上記の3業種の許可を取得している事業者様に、
例えば、500万円未満の管工事の請負実績があれば、その他工事に分類して、
報告をすることとなります。
この「その他工事」は、自治体によっては、報告の対象となっていない場合も
あります。(例えば、三重県は「その他工事」のリストの提出不要)
端的に言えば、「その他工事」は割りと軽視されがちです。
ただ、本当に「その他工事」を軽視して良いのでしょうか。
例えば、「その他工事」の報告が必要な自治体である愛知県の許可を
持っている事業者様の事業年度終了届において、
許可を持っている業種は細かく報告を行って、「その他工事」の報告は、
行わなかったとします。
大工、内装仕上、とび・土工の3業種の許可を持っているこの事業者様は、
その後、新たに許可業種を追加したいと考えたとします。
ここでは「管工事」を追加したいと考えたとします。
業種を追加するためには、管工事の該当資格を保有しているか、
一定年数の実務経験がある専門的知識をもった「専任技術者」を置かなくてはなりません。
候補者である技術者は、資格を持っていないので、実務経験を立証しようと考えました。
この技術者は、この事業者様に雇用されて10年以上のベテランです。
許可を保有していなくても、500万円未満の管工事であれば請け負うことが
可能なので、この在籍10年以上の間に一定年数以上、管工事を行っていた実務経験が
あるならば、許可を取得できる可能性が生まれます。
ところが、ここで大きな問題が発生します。
この事業者様は、許可業種である、大工、内装仕上、とび・土工の年に1回の報告は、
きっちりと行っていたのですが、「その他工事」を報告しておりません。
管工事を請け負っていたのであれば、許可業種以外の業種となるため、
「その他工事」に分類して、報告をしなくてはなりません。
報告だけをみれば、管工事を請けた実績は読み取れません。
そうすると、実務経験も認めてもらうこができません。
会社が請けていない仕事を、その会社に雇用されている従業員が経験できるはずも
ありませんから。
つまり、年に1回の報告の仕方で、その後の業種追加に影響がでてしまうことも
あるということです。
そういった意味でも、「その他工事」もしっかりと報告していく必要が
ありますね。
工事経歴書のまとめ方に不安を覚えることがありましたら、
是非、ご相談してください。
今であれば、まだ対処できるかもしれません。